【本記事は、2019年3月16日に「SHIBUYA GAME」にて公開された記事のアーカイブです】
各方面からeスポーツ業界に携わり、第一線で活躍する女性3人による”eスポーツ女子会”、まだまだ続きます!
前編では、3人がeスポーツに携わるきっかけや、それぞれの仕事に感じるやりがいや魅力、そしてeスポーツ業界で働くことを目指す人へのアドバイスをうかがいました。
引き続き、トークを繰り広げていただくのは、株式会社Wekids 及び 株式会社Rush Gaming のCEOを務めるチームオーナー西谷麗さん、eスポーツの番組やチーム運営に携わる日本テレビプロデューサーの佐々木まりなさん、そして毎日新聞社で全国高校eスポーツ選手権に携わる田邊真以子さん。
後編では、3人から1つずつ質問を投げかける形で、eスポーツ女子会ならではのディープな話題に突入していきます!
Q:eスポーツって儲かるんでしょ、という周囲のプレッシャーとどう戦うべき?
――ここからは、自分以外のお二人に聞いてみたい質問を1つずつ挙げていただきたいと思います。まずは1つ目の質問からお願いします!

毎日新聞社 eスポーツ担当・田邊真以子さん
田邊真以子(以下、真以子):
今、eスポーツがすごいと言われすぎて、まわりから「eスポーツって儲かるんでしょ?」と言われることにプレッシャーを感じています。決して簡単なことではないと思っているので、周囲からの期待と戦う不安がすごくあって……。お二人は、こういったプレッシャーに対してどう対処されていますか?
佐々木まりな(以下、まりな):
うーん、「黙れ」って言う。
一同:
(爆笑)
西谷麗(以下、麗):
最高!!
まりな:
無駄にプレッシャーをかけてくる人にはね。でも、善意で聞いてくる相手もいるだろうから、何かアドバイスしないと(笑)。
真以子:
他の企業の担当者の方も、そこでつまづくことって多いと思うんです。なかなか参考にできる前例もなかったり、どうしていくべきかわからなくて不安じゃないですか。
麗:
不安はありますよね。うちみたいなチーム運営も、カッコよく言えばスタートアップですが、言い方をかえれば中小企業なので。経営的に見ても、不安はずっとあるタイプのビジネスだと思っています。
まりな:
できるとしたら、実態を伝えることかな。すごそうな数字はあくまで数字でしかないし、海外の事例がそのまま日本に当てはまるわけではないこともたくさんあります。
日本のeスポーツ選手たちは、まだそれだけでは食べていけない人が多いし、参入している企業もまだまだ少ない。参入している企業も、自分たちのできる範囲で関わっているところが多いし、まだ夢を見るような段階ではないですよと。
だから、みんなでしっかりと土台をつくった後に、頑張って儲けていきましょう、と説明するのがいいかもしれませんね。
麗:
もし「どうやったら儲かりますか?」という建設的な相談であれば、まわりにある小さな成功事例を教えるとか。
「Rush Gaming」の例で言えば、影響力や発信力を持つGreedZzはアパレル販売ひとつをとっても、かなりの額を稼ぐ力を持っています。そういった事例を具体的に伝えてあげるといいのかなと思いますね。
Q:eスポーツ業界に進むことを、親に理解してもらえなかったら何と説得する?
――続いて、次の質問へ移りたいと思います。2つ目の質問をお願いします!

日本テレビプロデューサー・佐々木まりなさん
まりな:
私からの質問は、これからeスポーツに携わる仕事を目指す若い世代の人たちが、もしこの業界に進むことを親に理解してもらえなかったら、どうやって説得したらいいか、というものです。将来的にどうなるかわからない業界だし、反対されてしまうこともあると思うんですよ。
麗:
eスポーツに関連する仕事や企業も幅広いですよね。例えば、日テレに就職するなら間違いなくOKと言われるでしょうけど、うちみたいな会社とかですよね。説得が必要になるとしたら。
まりな:
eスポーツ業界にどっぷり浸かるような仕事に就職したい、というケースを想定しています。「自分がやりたいから」という理由以外に、なかなか説明が補強ができない業界だと思うんです。とはいえ、この業界にも少しずつ成功事例ができてきている中で、どうやったらロジカルに説得できるだろうって。
麗:
まず、今の時代を生きていくためには、スキルを身につけることが必要なんだという前提を伝えるところからですかね。その上で、自分のスキルを磨くことができて、かつお金がもらえる仕事というのが、eスポーツの業界にはあるんだ、という説明はどうでしょう。
例えば、映像を勉強しているとして、「なぜ制作会社に行かないの?」と言われたら、昔からある制作会社で面白い仕事をしようとすれば、激しい競争がある。一方で、まだ黎明期のeスポーツ業界なら、経験の浅い自分でもいきなり大きなプロジェクトができて、すごくいい経験ができるんだ、って。

まりな:
なるほど! たしかに今の説明なら自分のやりたいことと、お金が結びついているから、将来のことをちゃんと考えているんだなって伝わりそうですね。
真以子:
私も、大会を通じて接している高校生から、「普通の大学に行こうと思っていたけど、eスポーツの専門学校に行くことにしました」とか、「プロゲーマーを目指したいです」といった話を聞くことがあるんです。
まりな:
なんと、人生を変えてしまわれましたね!
真以子:
この前、プロゲーマーになりたいという子と話したんですよ。プロってそんなに甘くないよという話をしたんですが、本人もそれは十分にわかっていて。でも、ちゃんと大学にも進学するし、その上で、1度でいいから夢に挑戦したいんですって言われた時に、もう何も言えなくて。
この先、たとえ優良企業に入ったとしても、その会社が潰れない保証もないわけじゃないですか。一度きりの人生、好きなことを思い切りやって、それがダメだったら次の道を選べばいいよって、その子の話を聞いていて素直に思ったんです。
麗:
素晴らしい! 同じように考えるお父さんお母さんが増えればいいですよね。
真以子:
私が聞いた範囲では、そうやって想いや情熱を伝えて説得したという人が多かったです。
まりな:
いかに自分のやりたいことかという情熱を伝えつつ、先ほどの麗さんのロジックを合わせて提出したら、良い点がもらえそうな気がしてきました!
もし親に理解してもらえなかった時、説得をせずに家を出るのは良くないと思っているので、しっかりと話し合って欲しいですね。失敗するリスクもある世界だからこそ、戻れる家があることは大事だし、家族からも応援してもらえるのが理想だなと思います。
真以子:
親が反対するというのは、この業界にいる我々が評価されていることなんだと、私はいつも思っています。私たちがきちんと、良い業界だと思われるようにしていかなければならないなと。
私たちの運営する大会も、いかに高校生たちのご両親が「出ていいよ」と言ってくださるような大会にするかという、その部分にも責任が伴っていると感じます。
麗:
おっしゃる通りですね。本当に身につまされる思いです。若い世代だけでなく、その親世代にもいかに自分たちのチームや番組のファンになってもらえるか、というところにも繋がってきますね。